事業内容の説明

 

事業の目的

 東北地方は自動車産業、国内第3の集積基地として、今後の日本の自動車産業を支える地域になると期待されていた。東日本大震災により、部品等の供給遅延や操業の再開の遅れなどが懸念されていたが、完成車の新たな製造拠点が形成され、生産の状態は震災以前の状態へと回復しつつある。

 

 現在、宮城県では自動車産業の集積を加速させるとともに進出企業と地元企業の取引拡大の推進を行っている。しかしながら、東北地域の部品供給企業や電子部品・デバイス企業においては、技術力やコスト競争力の向上が課題となっており、完成車の製造拠点に近接した立地を活かして、完成車メーカーと製品開発段階から関係を構築していくことが重要であり、それを担う人材の育成が求められている。

 

 本事業では、被災地の人材ニーズを踏まえ、産学官が連携して、自動車組込みエンジニアの育成を支援するため、社会人を対象とした講座を実施し、その実証を行う。講座実施に当たっては、平成23年度、平成24年度の文部科学省委託事業で検証した教育カリキュラム・教材を用いるとともに、昨年度プロジェクト推進協議会で課題となった応用レベルの教材整備と周辺技術教育の強化を図る。
また、将来の自動車産業への人材供給を円滑に行うため、教育環境の整備を行う。5年後、10年後に自動車組込み産業を目指す人材を育成するため、工業高校生徒を対象に基礎講座を実施するとともに指導者育成のための工業高校教員向け研修会を実施する。就職支援のため、ハローワーク等との連携を強化し、また、講座受講者の達成度を客観的に評価するための評価基準を協議し、履修証明の発行の体制整備を行う。
 これらの活動を通して、集積の進む宮城県の自動車産業の復興・発展を担う自動車組込みエンジニア育成の支援を推進する。

 

 

前年度までの取組概要、成果と本年度との継続性

(平成23年度事業)
・取組概要
宮城県の自動車組込みエンジニア育成支援のため、産学官が連携し、教育カリキュラムおよび教材を開発し、検証のための講座を実施した。講座実施に当たっては、被災地以外の企業、専門学校の協力を得て実施した。

 

・事業成果
自動車組込みエンジニア育成テキスト、モデルベース開発テキスト、モデルベース開発指導書
自動車組込みエンジニア育成講座実施 20名参加、自動車組込み技術基礎講座 120名参加、教員研修会 5名参加

 

・本年度事業との継続性(成果の活用含む)
平成23年度プロジェクトは、検証講座を実施し、内容、時間数等の精査をした。本年度事業では、実証から講座実施を行い、宮城県の教育基盤整備と人材育成支援を推進する。 

 

(平成24年度事業)
・取組概要
平成23年度実施したプロジェクトで開発した教育カリキュラム、教材の応用レベルの教育プログラム開発と今後の宮城県の自動車組込み技術者育成のためのすそ野の広い人材育成支援を行った。産学官が連携し、社会人を対象とした自動車組込み技術講座の実施と工業高校学生を対象した自動車組込み基礎講座を実施し、教材等の実証を行った。講座実施においては、被災地以外の企業、専門学校の協力を得て実施した。


・事業成果
自動車産業の基礎知識テキスト、自動車組込み基礎講座テキスト、自動車組込み技術(ソフトウェア編)教材(演習データCD-ROM付属)、自動車組込み技術(ソフトウェア編)教材(演習データCD-ROM付属)
自動車組込み基礎講座  293名参加、自動車組込みエンジニア育成講座 18名参加
 
・本年度事業との継続性(成果の活用含む)
本年度事業では、平成23年度、平成24年度事業の成果物である教育教材を使用した講座を実施し、自動車組込みエンジニア育成支援を実践する。また、宮城県の産業が必要とする自動車組込み技術、周辺知識・技術の技術者育成支援のため教育カリキュラムを体系的にまとめるとともに、講座実施を行う。推進協議会において課題として挙げられていたすそ野の広い教育について、平成24年度に実施した基礎講座を継続するとともに拡大を目指す。これらの取り組みを通して、宮城県の自動車組込み技術者の育成を支援し、地域の復興を推移する。

 

 

教育プログラム・教材の開発内容等

●社会人教育プログラムの開発

平成23年度、平成24年度の成果物を含む、教育カリキュラムを体系的にまとめ、基礎から応用・実践までの教材開発及び講座実施のための教育環境を構築する。
1 社会人教育講座カリキュラム開発
2 自動車組込み実践教材の開発
3 学生受講者評価テスト開発、履修証明制度の検討・協議

 

●自動車CAD

宮城県自動車産業の周辺知識・技術として重要である自動車CAD技術者の人材育成支援の基盤を整備する。
1 自動車CADカリキュラム開発
2 自動車CAD教材開発
3 自動車CAD教員指導書(ガイド)開発

 

 

地域の人材ニーズの状況、事業の必要性等

 宮城県のものづくり産業は,沿岸部を中心に甚大な被害を受け,また,産業集積の中核をなす自動車関連産業や高度電子機械産業においては,地震による直接的被害とサプライチェーンの分断や震災以前の取引関係の維持することが懸念されていた。しかしながら、行政の支援、企業自身の努力により震災から1年の短期間のうちに急速に回復し、生産体制を震災以前の水準に戻すことができている。宮城県では、自動車産業を復興に向けた中心的な産業として位置づけ、産業の振興支援や自動車関連企業の更なる誘致を展開している。次代を担う新たな産業の集積・振興等を図り,地域特性を活かしたものづくり産業のグランドデザインを再構築し、震災からの復興が進められている。

 

 震災後の宮城の復興を実現し,持続可能な地域社会をつくっていくために何より必要なのは,復興を担う人材の育成である。宮城県では、自動車関連産業や高度電子機械産業等の企業誘致活動を展開するとともに,地元企業の取引拡大等に向けた支援を行うなど, 更なる産業集積を図り、自動車組込み産業等を維持発展させ、東北地方の基幹産業としての地位を確立することを目指している。

 

 平成23年度、24年度の文部科学省委託事業をとおして、今後、東北地域の復興・復旧、産業の維持発展においては、進出企業への人材の供給(人材育成基盤の整備、高度人材の育成)と地元企業と進出企業の取引拡大が課題であることが明らかとなった。東北へ進出した企業は、高度な技術を有する人材を求めており、このニーズに対応した人材の育成が急務である。また、宮城県では進出した自動車関連企業が発展する段階での人材供給を円滑に進めるため、自動車産業へ就業を希望する人材育成を推進する必要がある。さらに、進出企業と地元企業との取引拡大により、地域産業の活性化を図り、復旧・復興につなげることが重要であり、そのために地元企業へ進出企業との取引に対応できる体制の構築と高度な技術を持った人材を確保することが急務となっている。自動車組込み技術者の育成及び東北地域の産業界への人材供給体制の整備が重要である。

 

 

実証講座等の内容

●自動車組込み基礎講座

裾野の広い自動車組込みエンジニアの育成のための基礎講座を行い、東北地域の復興に向けた自動車組込み産業の次代を担う人材育成基盤の強化を図る。
・受講者:高等学校学生 各20名程度 総数240名程度
・講座開催地:本校および宮城県内の工業高校 計11箇所程度
・講座時間数:4時間×1日間(10回程度)
・開設時期:平成25年8月~12月
・講師:協力専門学校・企業から講師を派遣し実施する。
※一般公募 2回程度、工業高校への出張講座 10回程度

 

●自動車組込み基礎技術教員研修会

裾野の広い自動車組込みエンジニアの育成のため、高等学校において継続的に講座を実施するために指導者育成を行う。
・受講者:高等学校教員 20名程度
・講座開催地:本校(宮城県)
・講座時間数:4時間×1日間(2回程度)
・開設時期:平成25年11月
・講師:協力専門学校・企業から講師を派遣し実施する。

 

●自動車組込みエンジニア養成講座

自動車組込みの技術書を要請する講座を行う。平成23年度、平成24年度の内容を含んだものとし、応用、実践の技術レベルの修得を目指す。
・受講者:求職者、就業者等の社会人および高等専門学校、専門学校学生 20名程度
・講座開催地:本校(宮城県)
・講座時間数:自動車組込み実践講座 (5時間×6日 30時間程度)
         FPGAプログラム講座 (5時間×2日 10時間程度)
         モデルベース開発講座 (5時間×3日 15時間程度)
・開設時期:平成25年11月~平成26年1月
・講師:協力専門学校・企業から講師を派遣し実施する。

 

●自動車CAD講座

裾野の広い自動車組込みエンジニアの育成のため、周辺知識・技術の基礎講座を行い、東北地域の復興に向けた自動車産業の次代を担う人材育成基盤の強化を図る。
・受講者:高等学校学生  20名程度
・講座開催地:本校(宮城県)
・講座時間数:6時間×1日間(2回程度)
・開設時期:平成25年12月
・講師:協力専門学校・企業から講師を派遣し実施する。

 

 

成果の普及・平成26年度以降の事業展開の予定(自校・他校・企業・団体・地域との関係)

 本事業の成果普及のため、宮城県および東北地域の企業、教育機関を対象に成果報告会を開催する。また、広く成果の普及を図るため、組込み系学科を設置する全国の専門学校約200校および組込み関連産業企業約400社へ成果物を配布し、活用を促進する。更にインターネット上にホームページを作成し成果を公開することにより、多くの企業、教育機関、地域への本事業成果の普及を図る。
 平成26年度以降は、本事業の成果をもとに本校において講座を展開するとともに、宮城県内の教育機関にも講座実施を検討いただき、自動車組込みエンジニアの育成および東北地域の自動車産業人材育成を推進する。また、受講者の評価テスト、履修証明の発行等を通して、受講者の就職支援・企業の採用活動を支援する。
 協力いただいた他地域の専門学校等で成果を活用いただき、多くの地域での自動車組込みエンジニア育成を推進するとともに、行政の支援を受け更なる研究および人材育成を通して、東北地域の復旧・復興に貢献する予定である。